生物工学演習E -第8回- ラプラス変換

2023-11-30

今回の概要

ラプラス変換を理解する.

システムの極と安定性について理解する.

ラプラス変換

\(f(t)\)を\(t\geq0\)に対して定義された\(t\)の関数とする.
このとき\(f(t)\)のラプラス変換を\(\mathcal{L}[f(t)](s)\)で表し以下のように書ける.

\begin{align}
\mathcal{L}[f(t)] = F(s) = \int_0^\infty f(t) \exp(-st) dt
\end{align}

\(s\)は一般に複素数で\(s=\sigma + j \omega\).

以下のラプラス変換表を用いることで計算を省略することもできる.

\(f(t)\)\(F(s)\)
\(1\)\(\frac{1}{s}\)
\(t\)\(\frac{1}{s^2}\)
\(t^n\)\(\frac{n!}{s^{n+1}}\)
\(e^{at}\)\(\frac{1}{s-a}\)
\(\delta(t)\)\(1\)
\(\sin(\omega t)\)\(\frac{\omega}{s^2+\omega^2}\)
\(\cos(\omega t)\)\(\frac{s}{s^2+\omega^2}\)
基本的なラプラス変換対応表
\(f(t)\)\(F(s)\)
\(\frac{d}{dt}f(t)\)\(sF(s)-f(0)\)
\(\frac{d^2}{dt^2}f(t)\)\(s^2F(s)-sf(0)-\frac{d}{dt}f(t)|_{t=0}\)
\(\int_0^t f(t) dt\)\(\frac{1}{s} F(s)\)
\(e^{at}f(t)\)\(F(s-a)\)
\(f(t-a)ただしt=a以前はf(t)=0\)\(e^{-as}F(s)\)
微分積分とラプラス変換の対応

伝達関数

ラプラス変換後の出力\(Y(s)\)を入力\(X(s)\)で割った関数を伝達関数\(G(s)=\frac{Y(s)}{X(s)}\)と呼ぶ.

以下RLC回路における伝達関数導出の例

この回路の入力を\(e_i(t)\),出力を\(e_o(t)\)とするとキルヒホッフの第二法則(一周した際の電圧降下の総和が0)から

\begin{align}
e_i(t) &= Ri(t) + L\frac{d}{dt}i(t) + \frac{1}{C}\int_0^t i(t’) dt’\\
e_o(t) &= \frac{1}{C}\int_0^t i(t’) dt’
\end{align}

ラプラス変換すると

\begin{align}
E_i(s) &= RI(s) + LsI(s) + \frac{1}{Cs}I(s)\\
E_o(s) &= \frac{1}{Cs}I(s)
\end{align}

伝達関数\(G(s)=\frac{E_o(s)}{E_i(s)}\)は

\begin{align}
G(s) &= \frac{1}{Cs}I(s) \times \frac{1}{(R + Ls + \frac{1}{Cs})I(s)}\\
G(s) &= \frac{1}{Cs(R + Ls + \frac{1}{Cs})}\\
G(s) &= \frac{1}{LCs^2 + RCs + 1}
\end{align}

システムの極

\begin{align}
G(s) &= \frac{b_ms^m + b_{m-1}s^{m-1}+\dots+ b_0}{a_n s^n + a_{n-1}s^{n-1}+\dots+a_0}
\end{align}

このとき,\(m<n\)で分子と分母に共通の因子を持たないとき\(G(s)\)はn次系と呼ばれる.

n次系の分母を因数分解すると

\begin{align}
G(s) &= K\frac{(s-z_1)(s-z_2)\dots(s-z_m)}{(s-s_1)(s-s_2)\dots(s-s_n)}
\end{align}

このとき,\(s_1,s_2,\dots,s_n\)をシステムの極という.

部分分数分解した際に極は指数部の係数となっており,極を調べることでシステムの安定性やふるまいがわかる.

全ての極の実部が負->安定

極の実部がすべて負の場合,インパルス応答を考えると逆ラプラス変換したときに\(e\)の肩にのる係数が負となり\(t \rightarrow \infty\)で0になる.

極の実部が一つでも正->不安定

極の実部が一つでも正の場合,その項は\(e\)の肩にのる係数が正となり\(t \rightarrow \infty\)で\(\infty\)に発散する.