生物工学演習D -第11回- 行列の階数,行列式,逆行列

今回の目標

□行列の階数,行列式,逆行列の計算を思い出す.

概要

システムを状態空間表現しそのシステムの性質を調べる際,行列の階数,行列式,逆行列の計算は必須である.
そのため,今回は線形代数の復習を行う.

行列の階数(rank)

行列\(A\)の列ベクトルの一次独立なベクトルの最大個数を\(A\)の階数またはランクといい,\(\text{rank}(A)\)と表す.

ベクトル\(\boldsymbol{x}_i\)\((i=1,2,\dots,n)\)が一次独立の定義

\begin{align}
k_1\boldsymbol{x}_1+k_2\boldsymbol{x}_2+\dots+k_n\boldsymbol{x}_n=\boldsymbol{0}
\end{align}

を満たす\(k_i\)の組が\(k_1=k_2=\dots=k_n=0\)のみのときベクトル\(\boldsymbol{x}_1,\boldsymbol{x}_2,\dots,\boldsymbol{x}_n\)は一次独立であるという.

行列式(determinant)の計算

順列

整数1,2,3の並べ方(順列)は\(3!=6\)通りある.

123,132,213,231,312,321

このとき与えられた順列において,大きい数が小さい数より左側にあることを転倒と呼ぶ.そして転倒の回数が奇数の順列を奇順列,偶数の順列を偶順列とよぶ.

上記の例では132(1回),213(1回),321(3回)が奇順列,123(0回),231(2回),312(2回)が偶順列
()の中の数字は転倒回数.

また行列式を簡単に表現するために順列\(\rho = j_1j_2\dots j_n\)の転倒回数に応じて符号の変化する関数を以下のように定義する.

\begin{align}
\epsilon_{j_1j_2\dots j_n} =
\left \lbrace
\begin{array}{ll}
+1 & \rho が偶順列 \\
-1 & \rho が奇順列
\end{array}
\right.
\end{align}

正方行列の行列式

行列\(A\)の行列式は上記の\(\epsilon_{j_1j_2\dots j_n}\)を使って

\begin{align}
|A| = \sum_\rho \epsilon_{j_1j_2\dots j_n}a_{1j_1}a_{2j_2}\dots a_{nj_n}
\end{align}

で定義される.\(\sum_\rho\)はすべての順列の組み合わせ\((n!)\)分の和を表す.

逆行列の計算

余因子行列と逆行列

正則な(逆行列をもつ)行列\(A\)の余因子行列を\(\tilde{A}\)とすると逆行列は\(A^{-1} = \frac{1}{|A|}\tilde{A}\)

つまり逆行列を計算するためには行列\(A\)の行列式と余因子行列が計算できれば良い.

余因子行列\(\tilde{A}\)は余因子\(\alpha_{ij}\)を使って以下のように表される.

\begin{align}
\tilde{A} =
\left(\begin{array}{cccc}
\alpha_{11} & \alpha_{21} & \cdots & \alpha_{n1}\\
\alpha_{12} & \alpha_{22} & \cdots & \alpha_{n2}\\
\vdots & \vdots & \ddots & \vdots \\
\alpha_{1n} & \alpha_{2n} & \cdots & \alpha_{nn}
\end{array}\right)
\end{align}

ここで余因子\(\alpha_{ij}=(-1)^{i+j}|M_{ij}|\)で,\(M_{ij}\)は行列Aから\(i\)行目と\(j\)列目を取り除いた行列で小行列とよばれる.

参考文献

[0] Ogata, Katsuhiko. Modern Control Engineering. 5th ed. Prentice-Hall Electrical Engineering Series. Instrumentation and Controls Series. Boston: Prentice-Hall, 2010. p649-

[1] エアーズ 著,今井正隆 訳.マグロウヒル大学演習シリーズ 行列.1989.マグロウヒル出版株式会社.

[2] 余因子行列と逆行列の関係 FNの高校物理

講義

Posted by Nakamura